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病気の話…治療同意能力と判断力
高齢者と精神症状 判断力の問題(2)
東京保健生協精神科部長・大泉生協病院精神科
中島 昭 医師

拒食症 第31回
「食べない」という状態を考えるために、若い人にも認める「拒食症」という病態についてまず見ておきたい。
拒食症は、医学用語では神経性食欲不振症、神経性無食欲症(AN : AnorexiaNervosa)と言われ、男性より女性に圧倒的に多く、思春期の女性から高齢の女性まで広い年齢に認められる。自身による意図的な「拒食」から体重減少が引き起こされる。

適度なダイエットをして健康的になりたい、きれいになりたいという気持ちは誰にでもあるかもしれない。ところが、拒食症の場合、その「意図」は、自然な範囲で痩せることを通りこし、「体重を低下させること」に執着する。
当初は、食事量や食事回数を減らし、生活上必要な摂取カロリーを抑制する行為(制限行為)により、体重減少を進めていく。多くの人はこの制限型の行為であるが、食べ吐きと下剤乱用という行為(むちゃ食い排出行為、過食排出行為)を加えて体重低下を短期間に実行しようとする型の人もいる。

個性のやせと病的なやせ標準体重の指標とされるBMI(Body MassIndex)。体重s÷(身長mの二乗)。
統計上、健康長寿で過ごす人が最も多いのが22であり、22前後が身体と体重の理想的バランスとされる。例えば、160cmの場合、1.6×1.6×22は56.3kg。標準体重の80%は45kg。160cmでは45kg以下が「痩せ」となる。
もちろん体型は個性表現でもあるので、標準体重の80%以下(やせ傾向)になったから直ちに病的ということではない。しかし、人の身体は標準体重の80%以下、BMIの17.5以下になると低栄養、飢餓状態となり身体的な不調が生じやすくなり、社会生活上でも支障をきたしやすい。
この身体の悲鳴、様々な身体機能の障害を認めた時、「個性としてのやせ」の人は、この低体重は異常だと自覚し、栄養を補充することに同意し自ら低栄養状態からの自然な回復に努めるだろう。ところが、「病的なやせ」、「拒食症」の場合は、肥満、体重増加の恐怖に強迫的にこだわり、身体の悲鳴に自ら耳を傾けることが無い。カロリー摂取を頑なに拒み、自然な回復に向き合うことができず、体重低下をむしろ推し進めようと試みる。
次の二つ、心理的反応からの一過性の食欲低下、身体疾患による食思不振は拒食症から除外される。

病的なやせと身体合併症
拒食症では、病的なやせ願望から体重低下が進行し、慢性的な栄養失調状態となる。飢餓状態から身体面では様々な合併症が生じる。
例えば、低血糖、骨粗鬆症、歯の異常、血圧と心拍数の不自然な低下、脱水。若い世代では、心身の成長の抑制と後遺症という問題に直結する。内分泌(ホルモン)異常、無月経。
飢餓状態が進むと、肝機能障害、貧血・出血傾向、脳萎縮もひろく認める。感染症に容易になりやすくなる。さらに進むと、低血糖による意識消失、電解質異常、心電図異常など致死的な症状と隣り合わせともなる。実際、突然死の危険性は通常の10倍と報告されている。