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漢方の話…酒断ちを諭して飲ます甘い草
鉄砲洲診療所
沖山 明彦 医師

7月、古語では「七夕月」。
永山久夫氏によると、江戸時代の七夕は、稲穂にみたてた笹を飾り、初秋にとれる「すいか、なす、きゅうり、里芋、しょうが、枝豆、大根などをそなえ、場合により、干し鯛をぶらさげ」豊作や健康への願いをかけ、天の川にみたてて「そうめん」を生姜汁で食べたそうです。

江戸時代「いろは救民救薬の歌」の中に「腰痛(こしいた)み筋(すじ)がつるなら橙(だいだい)の皮に甘草(かんぞう)を入れ煎じ飲め」があります。コマーシャルで聞いたような歌です。
甘草は生薬の中でも重要で、「國老(こくろう / 帝王の師)」の別名があります。中国からロシア、スペイン、イランと幅広く分布していますが、日本での自生はなく、ふるくは中国から渡来し、正倉院に保存されています。後、徳川吉宗は「朝鮮薬材調査」を命じ、取り寄せた「人参」と並び「甘草」については、甲州での植物栽培を試み、現在は「甘草屋敷」に名のみ残っています。
甘草はウラル地方や中国産の「ウラルカンゾウ」からその根や根茎を用います。その成分から、医薬品も製造されています。生薬でも甘いものほど上等とされますが、甘味料としても使われます。

甘草を含む漢方は多数あります。
「甘草湯(かんぞうとう)」は珍しく甘草だけの漢方で、のどの痛み、腹痛、打撲の痛みなどに頓服で服用します。よく効くので「独勝(どくしょう)散」ともいわれます。甘草の量が多いので、その副作用(血圧の上昇、むくみ、血液のカリウムの低下など)から、連用に注意が必要です。
「四君子(しくんし)湯」は、食欲不振、貧血気味で顔色悪く、手足がだるく、言葉に力がない時の漢方です。
「小柴胡(しょうさいこ)湯」は、慢性肝炎で知られています。主役は「柴胡」ですが、甘草は肝・胃腸機能の改善と他の生薬の調整役です。
動悸や不整脈などに「炙甘草(しゃかんぞう)湯」が使われます。甘草を炒ったものを「炙甘草」といい、心機能の改善があり、この漢方を「復脈(ふくみゃく)湯」ともいいます。
甘草は肺を潤し、咳を止める作用もあり、麻黄が主役の「麻杏甘石(まきょうかんせき)湯」、半夏が主役の「小青(しょうせい)湯」にも含まれます。

5月連休、茨城県で奥久慈大子(おくくじだいご)十二社神社愛宕(あたご)祭、通称「大子ぶんぬき祭り」に遭遇。天守閣がついた大屋台が引手に前後に揺られ進行。二台がすれ違う時に、お互いのお囃子の調子が早くなり、「太鼓の皮を打ち抜く(ぶんぬく)」ほどに高まり、競い合う。
遠く藤が揺れるなか、八溝(やみぞ)山のやまもとからの久慈川霊水(名水100選)で造られた「家久長(やくちょう)」を神社の宮前で一献。さて肝を癒し、暴政に怒りのぶんぬき太鼓を皮が破れるまで響かせようか。