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HPH…病気になりにくい社会環境づくり〜HPHの目的
東京保健生協理事長・根津診療所所長
根岸 京田

江戸時代後期から幕末を扱った時代劇の中で、漢方医と蘭方医というのがよく出てきます。西洋の最新式の医療である蘭方に対し、伝統と経験に頼った古い医療として漢方が描かれることが多いのですが、診断学や病態生理の解明は進んでいない時代であり「病気を治せない」という意味では一緒でした。

19世紀半ば以降、生理学や病理学の進歩、細菌学の発達、麻酔法の開発と外科手術の飛躍的な進歩などで西洋医学の優位性が確立します。20世紀になってX線が発見されて診断学が大いに発達し、抗生物質(ペニシリン)の発見によって感染症を「治癒させる」ことができるようになりました。
しかし1970年代以降、先進国では非伝染性疾患(いわゆる生活習慣病)が大きな健康問題となります。高血圧や糖尿病をうまくコントロールして脳卒中や心筋梗塞などの合併症を予防し、健常人と同じ寿命を全うさせることが治療の目的です。決して高血圧や糖尿病を「治癒」させることが治療の目的ではありません。現代は「病気とうまく付き合っていく時代」なのです。最近の認知症やフレイルと呼ばれる虚弱高齢者の増加のことを考えるとなおさらです。
すると、社会に求められるのは、生活習慣病になりにくい環境を作ることであり生活習慣病の患者さんたちも一緒に生活できる環境を整えることであります。この「健康的なまちづくり」あるいは「社会の保健化」こそがヘルスプロモーションの目的に他なりません。