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介護の現場から…
つながりがつなぐ命〜Mさんの場合
訪問看護ステーション台東 所長
伊原 香子

4月のある日「ドアノブに腰をぶつけ動けなくなっているのに、入院をかたくなに拒み、衰弱が激しい女性がいる」、「自宅で点滴をして欲しい」と、地域の診療所から訪問看護の依頼が飛び込みました。何か事情を抱えている女性だと直観しました。
Mさん。80代・独居。Mさんと交流がある「生活と健康を守る会」の支援者のEさんに、Mさんについて詳細を尋ねました。Mさんは、夫との死別がきっかけで友人や親戚に借金し、その事が原因で息子と絶縁状態となっていました。弁護士紹介、借金返済手続き、生活の見守りなど「生活と健康を守る会」が支援をしていました。借金完済後もMさんとの交流が続き、MさんはEさんを頼りにしていました。ある日、Eさんとの些細な言葉の行き違いで関係が崩れ、交流が途絶えてしまいました。Eさんや「生活と健康を守る会」のメンバーもMさんを心配していました。自宅で衰弱している所を発見したのも守る会の友人で、連日様子を見に行きましたが、支援を拒絶するMさんに困っていました。
訪問依頼を受けた翌日、友人やケアマネと共にMさん宅を訪問。Mさんは座布団に横たわり、排泄物で畳までびしょ濡れの状態でした。入院の説得をしましたが、「何もしないで、帰って!」と繰り返しかたくなに拒絶。拒絶するMさんを、そのまま放置するわけにもいかず、声を掛け続け、半ば無理やり身体を拭き、着替えをするうち、左胸に多量の出血があることを発見しました。下着の一部をめくり、乳がんが皮膚を突き破っている状況と推察されました。左胸を見られることに強く抵抗を示すMさんに着替えを終え、「Eさんがとても心配しています」と話しかけたその時、拒絶する声が止まり、頷くMさんがいました。「Eさんの説得なら応じるかも知れない。」と思いました。持参した栄養ドリンクをゴクゴクと飲むMさんに一先ず安心し、退室しました。すぐその足でEさんの所に行き、Mさんの様子を伝え入院の説得をお願いしました。さらに健生病院にMさんの受け入れを依頼し、入院ベッドを確保。翌日、EさんはMさんの所に行き、「私や皆も心配している。元気になって帰ってきて欲しい」と声をかけ、Mさんは入院に応じてくれました。Mさんは、入院を拒絶する理由を語りませんでした。入院して左胸にできた傷の処置を受け、笑顔が見られたとの報告がありました。Mさんは、地域の方達の協力や支援が命を繋ぎ、入院が出来きました。

医療や介護のサポートだけでは彼女を救う事はできませんでした。地域に住む人と人のつながりと支援があったからこそ、利用者の暮らしが守られている事を実感。これからも地域に住む温かい支援者の方々との関わりを大切にし、互いに協力し合いながら、訪問看護の仕事に従事したいと思います。