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病気の話…医療と倫理について
倫理の問題(4)
東京保健生協精神科部長・大泉生協病院精神科
中島 昭 医師

第38回

患者の意志の推定
意思決定能力がない場合、医療に関する合理的判断力がない場合には、患者さんの意志の推定ということが焦点になります。元気だった時の患者さんが、どのような考え方や価値観を持ち、将来についてどのように思っていたか、病気になった時にどのような医療を望んでいたかという内容です。
患者さんの意志を推定する人、代理で判断する人は誰でしょうか。通常考えられるのは家族です。医療現場で病状説明を行う時は、患者さんを中心に家族の方に集まっていただき病状説明を行います。患者さんが意志表示できない場合も、患者さんの意志や考え方を理解していると思われる家族が代理判断者となることが現実的には多いでしょう。
ただし、現代の暮らし方は様々です。家族が同居している方も別々に暮らしている方もいます。本人の考えを理解している家族がいれば幸いですが、様々な事情で本人の考えを理解していない、代わりに判断することはできないという場合もあるでしょう。一人暮らしの方もたくさんいます。身近な家族はいなくなり、介護や福祉職の方が生活の支えとなっている方も増えています。いずれの場合も、自分が意志表示できなくなった時のことを考え、その判断を誰に託すのか、その際にどのようなことを望むのかを信頼できる家族や信頼できる人と話し合っておくことが大切です。
医療に関する意思決定を行う場面では大きく次の場合が想定されます。
(1)患者さん本人の判断力がしっかりしている場合、(2)本人の判断力が低下しているが家族が患者本人の意志を推定できる場合、(3)本人の判断力が低下しているが、家族が患者の意志を推定できない場合、(4)本人の判断力が低下しており、家族がいない場合、(5)患者さん本人の意志決定内容がすぐにはわからないが、緊急の医療処置を要する場合です。
将来の出来事や病状を全て想定しておくことは困難ですが、事前に基本的な考え方や要点を書面にしておくことが大切だと思います。それをもとに家族や信頼できる人と話しあいをすることができればと思います。
東京保健生協にも、「私の意思決定」という書面が病院や診療所をはじめ医療現場や介護現場に用意されています。法人の倫理委員会では「自己決定が不能ないし困難な状態になった患者の医療に関するガイドライン」を2004年に作り、その後も話し合いを続けて改訂を行っています。また、東京保健生協は日本医療福祉生協の「ライフデザインノート」の学習と普及をすすめています。
健康な時に、将来、自分が意志決定できなくなった時のことを考えるという習慣は日本にはありません。上記したことも未だ知らないという方の方が多いのが実情です。読者の皆様には上の資料について、身近な職員に問い合わせていただければと思います。